植込み型除細動器
(ICD)治療
心室頻拍と心室細動
頻脈性不整脈のうち心室頻拍(VT:ventricular tachycardia)や心室細動(VF:ventricular
fibrillation)は、意識消失や突然死の原因になることがあり、「致死性不整脈」とも呼ばれています。
心室頻拍は、心室から発生した異常刺激によって、拍動が非常に速くなります。また、心臓がポンプの役目を十分に果たせなくなるため、脳に送られる血液が少なくなり、失神やめまいを起こし、意識消失や心停止に至ることがあります。
一方、心室細動は、心室からの異常な刺激による非常に速く不規則な拍動が発生します。その結果、心臓が小刻みに震えた状態になり、心停止とほぼ同じ状態になります。このような状態になると、心臓は脳や体全体に血液を送り出すことができず、数秒以内に意識消失を起こし、即座に治療しなければ死に至る可能性が生じます。
致死性不整脈の治療方法
心室細動は特に突然死に至る危険性が高いため、心室細動が起こった場合は直ちに心臓マッサージや電気的除細動を行う必要があります。
電気的除細動による治療には、一般に病院などの医療機関で使用する除細動器や、自動体外式除細動器(AED)、植込み型除細動器(ICD)と呼ばれるタイプがあります。
植込み型除細動器(ICD)治療
致死性不整脈を感知し、電気ショックにより治療を行う方法です。
ICDは、体外式徐細動器を小型化したもので、致死性不整脈の危険性が高いと判断された患者さんの体内へ植込みます。心臓の電気的活動を常に監視し、致死性不整脈を感知すると即座に電気ショックによる治療を行い、心臓の働きを正常に戻すことで突然死を予防します。
ICDを植込むことで突然死を回避する確率は高まりますが、心室細動の発生を予防するものではないため、しばしば抗不整脈薬の併用が必要な場合があります。
心室頻拍に対しては、抗不整脈薬による薬物療法やアブレーション治療が行われることもありますが、持続性の心室頻拍が出現あるいは誘発される例では、ICD治療が優先されます。
ICDは、症状に合わせた3つの治療方法を有します。
- 1. 抗頻拍ペーシング
心室頻拍が起こった場合には、まず通常のペースメーカのような弱い電流による刺激を短時間、高頻度で加え、停止させることを試みます。この治療中に苦痛を感じることは、ほとんどありません。 - 2. カルディオバージョン
抗頻拍ペーシングで心室頻拍を治療できなかった場合、安全なタイミングで電気ショックによって発作を止めます。まずは弱い単発刺激で治療を行い、発作を止めることができない場合は徐々に刺激を強めて同様の治療を行います。この治療を受ける患者さんは「不意に胸をたたかれたような」軽度の不快感があるといわれます。 - 3. 除細動
心室細動が起こったとみなしたときには、カルディオバージョンよりさらに強いエネルギーの電気ショックを出して、細動を止めます。この治療を受ける患者さんは「胸を蹴られたような感覚」に驚きますが、一瞬で終わります。(患者さんによっては、心室細動のためすぐに意識を失い、治療が行われたことに気付かない場合もあります)
ICDについてはMedtronicのページで詳しく解説されています。