虚血性心疾患

「虚血」とは、血が足りない状態を意味します。つまり、心臓に血液が十分行き渡っていない状態が「虚血性心疾患」です。
心筋に血液を送り酸素と栄養素を供給する冠動脈が動脈硬化等で狭くなったり、血管がけいれんを起こしたりすることで、心臓は酸欠状態となり、胸痛等の症状があらわれます。

心臓が虚血状態になると

心筋に血液や酸素が行き渡らないと、胸が苦しくなって、痛みや絞めつけられるような症状が出ます。
症状は軽いものから激しいものまで様々ですが、胸のあたりだけでなく、あごやのど、肩や腕など、どことはいえない広い範囲にもあらわれるのが特徴です。

虚血状態が長く続くと、心筋の動きが悪くなるので、全身へ血液を送るポンプ機能にも影響が出てきて、息苦しさなどの心不全の症状があらわれます。

重症になると、血圧が下がってショック状態に陥ります。
また、心臓の電気信号を伝える働きにも障害をきたし、「心室細動」という命にかかわる不整脈を起こすことがあります。

心筋梗塞

心筋梗塞とは

血管の内側に溜まったコレステロールのかたまり(プラーク)に何かの拍子で亀裂が入ると、そこをかさぶたのように血液のかたまりが覆っていきます。このかたまり(血栓)が血管を完全に塞いでしまうと、その先の心筋には酸素が届かず、細胞が死んでしまいます。
これを「心筋梗塞」といいます。
一度壊死してしまった心筋は元には戻りません。

心筋梗塞の治療

心筋の血流を回復させる再灌流療法(カテーテル治療、血栓溶解療法、冠動脈バイパス手術)が行われます。

心筋梗塞を疑ったらすぐ救急車を!

治療開始までの時間が救命のカギとなるため、早急にカテーテル治療を行うことが理想です。
下記に当てはまる場合はすぐに救急車を呼びましょう。

  • - 冷や汗や吐き気を伴う非常に激しい重い胸痛*が20分以上続く
  • - 硝酸薬(ニトログリセリン)を舌下(舌の下において、なめて溶かす)又は噴霧(スプレー容器を使用)しても痛みがおさまらず20分以上続く
  • - 顔面が蒼白になり、苦しいが、身体を動かすのも辛い
  • - けいれんを起こしたり意識を失ったりする(危険な不整脈が出たとき)
  • *高齢者や糖尿病の患者さんは激しい痛みを感じないこともあります

狭心症

狭心症とは

運動時等、普段より酸素を必要とする状況では、心臓は血流量を増やして対応しようとします。
ところが、血管が狭くなる(狭窄)と血液の供給が間に合わず、心臓が酸欠状態になった結果、胸痛(狭心痛)が起こります。
症状は一時的で、数十秒から長くても10分程度で自然におさまります。

狭心症の種類

1) 起こり方による分類
労作性狭心症
運動したり、重いものを持ったりした時に、心臓に負担がかかり起こります。
運動時や歩行時、駅の階段をのぼるとき等に出現し、休むと症状がおさまります。
冠攣縮性狭心症
深夜や明け方の就寝中等、安静にしていても起こります。
血管のけいれんや血管内に血のかたまりができて冠動脈の血流が減ったときに起こります。

2) 病状による分類
安定狭心症
どの程度の動作で発作が起きるかをある程度予測できます。安定した狭心症です。
不安定狭心症
安静時狭心症が新たに発症した、発作の回数が増えた、発作止めの薬が効かなくなった、軽い動作で発作が起こるようになった等の状態です。
心筋梗塞になりやすいため、このような症状があるときはすぐに医師に相談してください。

狭心症の治療

薬物療法や血栓溶解療法、冠動脈形成術、冠動脈バイパス手術等が挙げられます。

心筋梗塞と狭心症の違い

心筋梗塞と狭心症の大きな違いは、心筋が回復するかどうかです。 狭心症では回復しますが、心筋梗塞では壊死した心筋が回復することはありません。

心筋梗塞 狭心症
一部の心筋が死んでいる 心筋の状態 虚血にさらされても生きている
血栓で冠動脈が完全につまった状態 血管の状態 冠動脈の狭窄のため血液が流れにくくなった状態
心臓の仕事量とは関係なく突然発症することがある 発症の特徴 労作性の場合、心臓の仕事量(需要)と冠血流量(供給)のバランスが崩れて起こる
冷や汗や吐き気、恐怖感を伴う激しい痛み(20分以上) 症状の特徴 締めつけられる、押さえつけられるような鋭い痛み(数十秒〜10分程度)
治らない 安静の効果 治る
硝酸薬の舌下錠を使用しても症状はおさまらない 硝酸薬の効果 原因となった労作を中止したり、硝酸薬の舌下錠を使用したりすると症状がおさまる
蒼白になりやすい 顔色 蒼白になりづらい
降下する 血圧 上昇する

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