心不全についての説明

心不全について

心不全とは、単一の疾患名ではなく、心臓の機能が低下し、全身の組織の代謝に対して必要量の血液を送ることができなくなった状態のことを言います。心不全になり、心拍出量が低下すると、さまざまな心不全症状が起こります。

心不全の症状

心不全の種類や程度によって、以下のようなさまざまな症状が現れます。
しかし、心機能が低下していても無症候のことは多々あり、また心不全による疲労や息切れといった症状を、加齢によるものだと思っている患者さんもいます。

症状

  • 息切れ、動悸、呼吸困難、起坐呼吸
  • 易疲労、疲労感
  • 夜間不眠
  • 下肢の浮腫
  • 腹部膨満感または圧痛、食欲不振
  • 泡状の痰や、痰がからむ咳
  • 夜間頻尿
  • 意識障害、錯乱
  • もの忘れ

心不全の原因について

心不全の原因となる代表的な疾患

  1. 虚血性心疾患:心筋梗塞や狭心症
  2. 心筋症:拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症等
  3. 弁膜症
  4. 高血圧
  5. 不整脈
  6. 先天性心疾患:心房中隔欠損、心室中隔欠損など
  7. その他:収縮性心膜炎、心タンポナーデ等、肺動脈性高血圧症、サルコイドーシス、アミロイドーシス等

心不全をきたしうる他の疾患および病態

  1. 全身性の内分泌・代謝疾患:糖尿病、甲状腺機能異常、クッシング症候群、副腎不全、成長ホルモン過剰分泌等
  2. 栄養障害:ビタミンB1、カルニチン、セレニウム等の欠乏症等
  3. 薬剤:β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬、心毒性のある薬剤等
  4. 化学物質:アルコール、コカイン、水銀、コバルト、砒素等
  5. その他:シャーガス病、HIV感染症

心不全の診断基準

心不全の診断基準

心不全の分類

 

右心不全と左心不全

左心系の機能が低下し、肺循環系にうっ血が著明になるものを「左心不全」、右心系の機能が低下し、体循環系にうっ血が著明になるものを「右心不全」と呼びます。右心不全の最大の原因は左心不全であり、単独の右心不全は全体の10%以下といわれています。

>右心不全と左心不全

 
 

急性心不全と慢性心不全

急に心不全症状が出てきたものは「急性心不全」(時間〜日単位) と呼びます。

  • 病態:代償可能な範囲を上回る急激な心機能の低下、血行動態の異常が高度、左心不全が多い。

慢性的に心不全症状がある場合は「慢性心不全」(月〜年単位)と呼びます。

  • 病態:代償された状態が長期間持続した後破綻し、収縮能および拡張能の低下をまねいた状態。代償機構の破綻により増大した体液が貯留する。

また、慢性心不全から急に悪くなったものは「慢性心不全の急性増悪」と呼ばれます。

 
 

HFrEFとHFpEF

左室駆出率が正常か低下しているかによる分類で最近よく用いられます。

  1. HFrEF: Heart Failure with Reduced Ejection Fraction
    左室駆出率が低下した心不全
    心不全の過半数を占め、張型心筋症、高血圧性心疾患、心筋梗塞後など左室収縮機能の低下に基づく心不全です。
  2. HFpEF  Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
    左室駆出率(LVEF)が保持された心不全
    左室収縮機能ではなく左室拡張機能の障害に基づく心不全で心不全全体の1/4〜1/2を占めHFrEFに比べて高齢、女性、高血圧合併が多いことが知られています。予後はHFrEFと同程度に不良ですが有効な治療法は確立されていません。
 

心不全の重症度

 

NYHA心機能分類

心不全の重症度をあらわすものとしてよく使われます。労作による症状が出るかどうかでクラス分けされています。NYHA心機能分類は、大まかな心機能障害の程度を問診により簡便かつ短時間に知ることができる点が優れています。一方、心不全の重症度の判定は自覚症状に依存して行われるため、心機能を定量的、客観的に判定しにくい点が欠点として指摘されています。

軽度 クラスI 心疾患はあるがからだ活動に制限はない。
日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難または狭心痛を生じない。
クラスII 軽度の身体活動の制限がある。
安静時には無症状。日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
中等度 クラスIII 高度な身体活動の制限がある。
安静時には無症状。日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
重度 クラスIV 心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな 労作でこれらの症状は増悪する。
 

慢性心不全の経過

 

慢性心不全は,治療の経過において急性増悪を繰り返すことが多く、再入院率も高くなります。急性増悪によって、心機能は急激に低下します。治療効果が得られ、急性期を脱すると心機能は部分的に回復しますが、自覚症状が改善したとしても心機能が完全に回復することはほとんどなく、次の急性増悪の際には、さらに心機能は低下します。このように、慢性心不全は急性期と慢性期を繰り返しながら徐々に全身状態が悪化していくという経過をとります。

慢性心不全の経過

[ 出典 ] 横山広行、他:チームで挑む慢性心不全治療−多職種の力を活かす新たな試み 医学界新聞第2967号2012

 
心不全について
心不全とは、単一の疾患名ではなく、心臓の機能が低下し、全身の組織の代謝に対して必要量の血液を送ることができなくなった状態のことを言います。心不全になり、心拍出量が低下すると、さまざまな心不全症状が起こります。
「心不全の症状」

心不全の種類や程度によって、以下のようなさまざまな症状が現れます。
しかし、心機能が低下していても無症候のことは多々あり、また心不全による疲労や息切れといった症状を、加齢によるものだと思っている患者さんもいます。

症状

  • 息切れ、動悸、呼吸困難、起坐呼吸
  • 易疲労、疲労感
  • 夜間不眠
  • 下肢の浮腫
  • 腹部膨満感または圧痛、食欲不振
  • 泡状の痰や、痰がからむ咳
  • 夜間頻尿
  • 意識障害、錯乱
  • もの忘れ
心不全の原因について

心不全の原因となる代表的な疾患

  1. 虚血性心疾患:心筋梗塞や狭心症
  2. 心筋症:拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症等
  3. 弁膜症
  4. 高血圧
  5. 不整脈
  6. 先天性心疾患:心房中隔欠損、心室中隔欠損など
  7. その他:収縮性心膜炎、心タンポナーデ等、肺動脈性高血圧症、サルコイドーシス、アミロイドーシス等
心不全をきたしうる他の疾患および病態
  1. 全身性の内分泌・代謝疾患:糖尿病、甲状腺機能異常、クッシング症候群、副腎不全、成長ホルモン過剰分泌等
  2. 栄養障害:ビタミンB1、カルニチン、セレニウム等の欠乏症等
  3. 薬剤:β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬、心毒性のある薬剤等
  4. 化学物質:アルコール、コカイン、水銀、コバルト、砒素等
  5. その他:シャーガス病、HIV感染症
心不全の診断基準

心不全の診断基準

心不全の分類
 

右心不全と左心不全

左心系の機能が低下し、肺循環系にうっ血が著明になるものを「左心不全」、右心系の機能が低下し、体循環系にうっ血が著明になるものを「右心不全」と呼びます。右心不全の最大の原因は左心不全であり、単独の右心不全は全体の10%以下といわれています。

右心不全と左心不全

 
 

急性心不全と慢性心不全

急に心不全症状が出てきたものは「急性心不全」(時間〜日単位) と呼びます。

  • 病態:代償可能な範囲を上回る急激な心機能の低下、血行動態の異常が高度、左心不全が多い。

慢性的に心不全症状がある場合は「慢性心不全」(月〜年単位)と呼びます。

  • 病態:代償された状態が長期間持続した後破綻し、収縮能および拡張能の低下をまねいた状態。代償機構の破綻により増大した体液が貯留する。

また、慢性心不全から急に悪くなったものは「慢性心不全の急性増悪」と呼ばれます。

 
HFrEFとHFpEF

左室駆出率が正常か低下しているかによる分類で最近よく用いられます。

  1. HFrEF: Heart Failure with Reduced Ejection Fraction
    左室駆出率が低下した心不全
    心不全の過半数を占め、張型心筋症、高血圧性心疾患、心筋梗塞後など左室収縮機能の低下に基づく心不全です。
  2. HFpEF  Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
    左室駆出率(LVEF)が保持された心不全
    左室収縮機能ではなく左室拡張機能の障害に基づく心不全で心不全全体の1/4〜1/2を占めHFrEFに比べて高齢、女性、高血圧合併が多いことが知られています。予後はHFrEFと同程度に不良ですが有効な治療法は確立されていません。
心不全の重症度
 

NYHA心機能分類

不全の重症度をあらわすものとしてよく使われます。労作による症状が出るかどうかでクラス分けされています。NYHA心機能分類は、大まかな心機能障害の程度を問診により簡便かつ短時間に知ることができる点が優れています。一方、心不全の重症度の判定は自覚症状に依存して行われるため、心機能を定量的、客観的に判定しにくい点が欠点として指摘されています。

軽度 クラスI 心疾患はあるが身体活動に制限はない。
日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難または狭心痛を生じない。
クラスII 軽度の身体活動の制限がある。
安静時には無症状。日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
中等度 クラスIII 高度な身体活動の制限がある。
安静時には無症状。日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
重度 クラスIV 心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな 労作でこれらの症状は増悪する。
 
慢性心不全の経過

慢性心不全は,治療の経過において急性増悪を繰り返すことが多く、再入院率も高くなります。急性増悪によって、心機能は急激に低下します。治療効果が得られ、急性期を脱すると心機能は部分的に回復しますが、自覚症状が改善したとしても心機能が完全に回復することはほとんどなく、次の急性増悪の際には、さらに心機能は低下します。このように、慢性心不全は急性期と慢性期を繰り返しながら徐々に全身状態が悪化していくという経過をとります。

慢性心不全の経過

[ 出典 ] 横山広行、他:チームで挑む慢性心不全治療−多職種の力を活かす新たな試み 医学界新聞第2967号2012

 

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